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ADHDの子どもがダンスを苦手とする理由と克服するための運動療育

「うちの子、ダンスの授業になると嫌がるんです……」「振り付けを覚えられなくて、いつも遅れてしまう」—— ADHDの子どもを持つ親御さんの中には、こうした悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか?

ダンスはリズム感や空間認知、協調性が求められるため、ADHDの特性によって苦手意識を持ちやすい活動の一つです。しかし、適切なアプローチを取れば、苦手を克服し、楽しく踊れるようになる可能性もあります。

本記事では、ADHDの子どもがダンスを苦手とする理由を解説し、運動療育を活用して克服する方法を詳しく紹介します。お子さんが自信を持ってダンスに取り組めるようになるためのヒントを、ぜひ参考にしてください。

ADHDの子どもがダンスを苦手とする主な理由

ADHDの子どもがダンスを苦手と感じるのには、いくつかの特性が関係しています。ここでは、その主な理由を解説します。

振り付けを覚えるのが難しい

ADHDの子どもは、短期記憶(ワーキングメモリ)の働きが弱いことがあり、一連の動きを順番通りに覚えるのが難しいことがあります。

特徴と課題

  • 途中で動きを忘れてしまい、流れについていけない
  • 口頭での説明だけでは理解しにくい
  • 次の動作を予測するのが苦手

ポ克服するための工夫

  • 動きを1つずつ分解し、短いパートごとに練習する
  • 先生や親が視覚的なサポート(動画・イラスト)を活用する
  • 何度も繰り返して身体に動きを覚えさせる

 

リズムを合わせるのが苦手

ダンスでは音楽のリズムに合わせて動く必要がありますが、ADHDの子どもはリズム感をつかむのが苦手なことが多いです。

特徴と課題

  • 曲のテンポに合わせて動くのが難しい
  • リズムの変化に対応できず、動きがずれる
  • 他の子どもたちと動きを合わせるのに苦労する

ポ克服するための工夫

  • 手拍子や足踏みを使ってリズムに慣れる
  • ゆっくりしたテンポの曲から始める
  • シンプルなリズムパターンを繰り返し練習する

体の動きをコントロールしにくい

ADHDの子どもは、体の動きを細かく調整するのが難しいことがあります。これは、衝動性や注意のコントロールが関係しています。

特徴と課題

  • 手足を意図した通りに動かせない
  • バランスを崩しやすい
  • 細かい動作の調整が苦手

ポ克服するための工夫

  • バランスを鍛える運動(片足立ち・平均台歩きなど)を取り入れる
  • 鏡の前で動きを確認しながら練習する
  • ゆっくりした動作で、体の使い方を意識する

集団での動きに戸惑う

ダンスでは、他の子どもたちと動きをそろえることが求められますが、ADHDの子どもにとってはこれが大きなハードルになることがあります。

特徴と課題

  • 周りの動きを見ながら自分の動きを調整するのが難しい
  • 立ち位置を間違えたり、ぶつかってしまう
  • 集団行動に対する苦手意識が強く、ストレスを感じる

ポ克服するための工夫

  • まずは1対1の練習から始め、徐々にグループでの練習に移行する
  • 立ち位置に目印をつけて、視覚的にサポートする
  • ペアや小グループで、少人数から慣れていく

ダンスの苦手を克服するための運動療育とは?

楽しく取り組める環境を整えることが大切です。

ダンスの苦手を克服するための運動療育とは?

運動療育とは? ADHDの子どもへの効果

運動療育とは、遊びや運動を通じて発達に必要なスキルを伸ばす療育方法です。ADHDの子どもにとって、運動療育を取り入れることで、身体の使い方がスムーズになり、空間認知能力や集中力の向上が期待できます。

特に、ダンスの基礎となるバランス感覚やリズム感を鍛える運動療育は、ダンスへの苦手意識を軽減するのに役立ちます。楽しく身体を動かしながら取り組めるため、成功体験を積み重ねることができ、自信にもつながります。

ダンスに必要な運動スキルを鍛える方法

ダンスには、バランス感覚・リズム感・協調運動といったスキルが必要です。例えば、片足立ちやステップ運動を取り入れることで、体幹を鍛え、ダンス中の姿勢が安定します。また、音楽に合わせた簡単なステップ練習を行うことで、リズム感を養うことができます。

さらに、左右の動きをそろえるためには、クロスステップやジャンプなどの動きを取り入れ、体の左右差をなくすことも重要です。こうした基礎的なトレーニングを積み重ねることで、ダンスの動きがスムーズになります。

楽しみながら取り組める練習方法

ダンスに対する苦手意識を克服するためには、楽しく取り組める環境を整えることが大切です。まずは、子どもが好きな音楽に合わせて体を動かすだけでも、十分な練習になります。リズムに乗って手を叩いたり、ジャンプしたりすることで、自然と身体を動かす楽しさを感じられるでしょう。

また、短い時間でも継続して練習することが大切です。集中力が続かない場合は、1回の練習を10分程度に区切り、小さな成功体験を積み重ねることで、達成感を得られるようにすると良いでしょう。

ADHDの子どもがダンスを楽しむための具体的な工夫

ダンスを楽しむためには、単に動きを覚えさせるのではなく、脳の働きを理解しながら適切なアプローチを取ることが重要です。ADHDの子どもは、前頭前野の機能が未熟であり、ワーキングメモリや衝動の抑制が難しい傾向にあります。しかし、適切な環境を整え、神経可塑性(脳の柔軟性)を活かしたトレーニングを行うことで、苦手意識を克服し、ダンスを楽しめるようになります。

ここでは、脳科学の知見を取り入れながら、ADHDの子どもがダンスを楽しむための具体的な方法を紹介します。

簡単な振り付けから始める 〜ワーキングメモリを活用する〜

ADHDの子どもにとって、一度に多くの動きを記憶し、順番通りに実行することは難しいことがあります。これは、ワーキングメモリ(短期記憶を活用して情報を保持・処理する能力)が弱いためです。

対策として、以下の工夫を取り入れましょう。

    • 「チャンク化(かたまり化)」の活用
      <長い振り付けを、一つの動作ごとに分割して練習し、それをつなげていく方法です。例えば、「手を上げる→回る→ジャンプする」という3つの動作を1つの「チャンク」として覚え、それを繰り返し練習することで、脳が情報を整理しやすくなります。
    • リズムとセットで覚える
      言葉とリズムを組み合わせて覚えると、記憶の定着がしやすくなります。例えば、「1で手を上げる、2で回る、3でジャンプ!」と声に出しながら練習すると、脳がより効率的に情報を処理できます。
    • ミラーニューロンを活用する
      鏡を使って指導者の動きを真似しながら覚えると、視覚情報と運動情報が結びつき、習得しやすくなります。ミラーニューロン(他者の動きを見たときに活性化する神経細胞)を活用することで、学習効果を高めることができます。

音楽に合わせた体遊びを取り入れる 〜リズム感と感覚統合の向上〜

リズムに乗って体を動かすことは、ADHDの子どもにとって脳の発達を促す効果があります。特に、小脳と前庭系(バランスを取る機能)が関与する運動は、注意力の向上にもつながることが研究で明らかになっています。

具体的な取り組み

  • ボディーパーカッション
    手拍子や足踏みを使って、音楽のリズムに合わせた動きを取り入れます。例えば、「手拍子→膝を叩く→足踏み」のように、音と動きを一致させることで、リズム感を身につけると同時に、感覚統合を促進します。
  • バウンシング運動
    音楽に合わせて軽くジャンプしたり、ボールを弾ませたりすることで、リズムに対する身体の反応性を向上させます。これにより、ダンス中の動きがスムーズになります。
  • メトロノームを活用
    ADHDの子どもは、自分のペースで動きすぎてしまうことがあります。そのため、メトロノームを使って一定のリズムで動く練習をすると、タイミングを合わせる感覚が身につきます。

個別練習と集団練習のバランスをとる 〜前頭前野の発達を促す〜

ADHDの子どもは、状況の変化に適応するのが苦手なため、いきなり大勢の中で踊ることにストレスを感じることがあります。そのため、最初は個別練習から始め、徐々に集団での練習に移行するのが効果的です。

ステップアップの方法

  1. 個別練習(安全な環境で自信をつける)
    まずは、先生や親とマンツーマンで練習を行い、基本的な動きを身につけます。この段階では、成功体験を積み、自信を持つことが最優先です
  2. 小グループでの練習(社会性を高める)
    2〜3人のグループで練習を行い、他の子どもと動きを合わせる経験を積みます。簡単なフォーメーションを取り入れることで、空間認知能力も向上します。
  3. 全体練習(適応力を養う)
    最後に、全体のダンス練習に参加します。このとき、他の子どもより少し早めに練習を開始し、本人が安心できるようサポートすることが重要です。

また、脳科学的に見ると、前頭前野(判断や計画を司る部位)は、集団行動によって活性化しやすくなります。そのため、無理のない範囲で集団での活動を取り入れることで、自己調整力や注意力の向上につながります。

楽しさを最優先にする 〜ドーパミンの分泌を促す〜

ADHDの子どもは、楽しいと感じることに対して集中しやすく、興味を持てないことには注意を向けにくいという特性があります。これは、脳内のドーパミン(やる気や快感を生み出す神経伝達物質)の分泌が影響していると考えられます。そのため、ダンスを楽しめるような環境作りが非常に重要です。

楽しく取り組む工夫

  •  好きな音楽を選ぶ
    自分の好きな曲を使うと、モチベーションが上がりやすくなります。特に、テンポがはっきりしていて覚えやすい曲がおすすめです。
  • ゲーム感覚を取り入れる
    「動きを覚えたらシールを貼る」など、達成感を感じられる仕組みを作ると、意欲的に取り組めます。
  • 短時間の練習を繰り返す
    ADHDの子どもは長時間集中するのが苦手なため、1回10分程度の短い練習を複数回行う方が効果的です。

FAQ(よくある質問)

Q1. ADHDの子どもにダンスは向いているのでしょうか?
A. はい。適切なサポートがあれば、ADHDの子どもでもダンスを楽しめます。自由に動けるスタイルや、テンポが一定のダンスなら取り組みやすいでしょう。
Q2. ADHDの子どもがダンスで苦労しやすいポイントは?
A. 振り付けの記憶、リズムのズレ、衝動的な動き、空間認知の難しさなどがあります。少しずつ練習し、視覚的サポートを活用すると改善しやすいです。
Q3. 家庭でできる簡単なダンス練習方法は?
A. 手拍子でリズム感を養う、ミラーダンスで動きを覚える、シンプルなステップを繰り返すなどが効果的です。遊びながら練習しましょう。
Q4. ADHDの子どもに適した音楽は?
A. テンポが一定でシンプルなリズムの曲や、繰り返しの多い楽曲が適しています。好きな曲を使うと、より意欲的に取り組めます。
Q5. ダンス発表会や運動会で緊張しないための工夫は?
A. 事前に会場で練習する、短時間でこまめに練習する、成功のイメージを持つなどが有効です。本番前にリラックスする習慣を作るのもおすすめです。

 

ADHDの子どもがダンスを楽しむためには、ワーキングメモリの負担を減らし、リズム感や空間認知を高める工夫が必要です。また、個別練習から段階的に集団練習へ移行することで、無理なく適応できるようになります。

脳科学的なアプローチを取り入れることで、ADHDの特性に合わせた効果的な練習が可能になります。お子さんが自信を持ってダンスを楽しめるよう、ぜひ今回の方法を試してみてください!その他お気軽にお問い合わせください。

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