DCDを伴うASD児たち
DCDを伴うASD児の中には、“体育に参加できない”という子どもたちが少なからずいます。
ASD特有の社会性の困難さがあるため、度重なる人間関係のトラブルに加え、極端な身体的不器用さが見られるため、同年齢の子供たちが簡単に行える運動課題でつまづく場面も多く見られます。
近年では、ASDとDCDが合わせて診断されるようになってきていますが、ASD特有の感覚や認知あるいは社会性などの発達特性を把握しながら、子どもたちの身体的不器用さに対して配慮しながら運動を行っていくのは、クラス担任の教員がワンオペで行う学校教育現場(体育)では困難を極めるというのが実情です。
ASDとDCDの診断について
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)は、以下の二つの項目を診断基準とする発達障害のグループです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 対人コミュニケーションや対人行動の困難さ
- 限局的、反射的な行動や興味のパターン(こだわり)
※最新の診断マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:DSM-5)より
ASD児には極端な身体的不器用?
ASD児には極端な身体的不器用さを示す子どもがいる一方で、優れた運動技能を見せる子どももいます。しかし、ASDに関する研究では一貫して、その特徴の一つとして身体的不器用さを示す子どもが多いのは事実です。近年では、この身体的不器用さを発達性協調運動障害(DCD)を診断し、DSM-5では、ASDとDCDを合わせて診断することができるようになっています。
発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)は、身体的不器用さを主とする発達障害のグループです。
発達性協調運動障害(DCD)
- 脳性麻痺などの身体疾患がないにも関わらず、日常的な運動技能が暦年齢や知能から期待されるレベルよりも著しく劣っており、それらが生活に支障をきたしている
※最新の診断マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:DSM-5)より
ASD児の運動発達特性
ASD児は日常的に、
身体的不器用さが見られる場面
- 手先の器用さが求められる場面
- 全身を同時に使う場面
- 幅広い身体活動場面
運動療育型児童デイサービスCREDOで実践されるASD児への運動指導
ASD児への運動指導で欠かせないこと
- 見通しを立てる
- 具体的に、分かりやすく
- スモールステップ
- 感覚特性を把握する
- 模倣の苦手さへの配慮
また、運動場面では、その子どもの特性に合わせてできる課題を設定し、成功体験を積み重ねることが不可欠です。感覚過敏などの特性も把握し、支援者(運動指導者)がまずは理解すること、が何よりも重要になってきます。
子どもたちの心理的変化
運動を行うことに対する苦手さが強く「できない」ことへの恐怖や劣等感が強く見られる子どもたちが発達障害児に中には多く見られます。
指導当初は、「やだ」「できない」「無理」など消極的な発言や、運動に不参加を決めこむ子どももいます。
でも、運動療育の場では、スモールステップを用いて、周りが楽しそうに実施しているのを見ているうちに参加し始め、生き生きと運動に取り組む様子が見られ始めます。そうやって、通い続けることで「やりたい!」と運動に対して意欲的に参加するようになってきます。
また、できることが増えることで自信が芽生え、新しいことにも挑戦する姿が見受けられるように変化してきます。
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